2014年の挨拶
「過ちては則ち改めるに憚ること勿れ」、そして科学性と中立性
月日の経るのは早く、東日本大震災から3年になる。この震災では、多大なる犠牲者が生まれ、その犠牲から多くの瑕疵も明らかにされ、また多くの教訓を得ている。この災害をへて各科学技術の社会貢献に関わる成否が選別され、正鵠を得た技術は、さらに社会貢献の可能性を高めている。一方では、擬装科学による瑕疵の修正には巨額な予算が投入されてきている。
特に、国土・宅地の環境問題を例にすれば、この問題で東日本大震災後、稀有な悲しい現象が発生している。地質汚染問題では、環境省直轄事業である茨城県神栖市での旧日本軍の毒ガス弾の原料と言われている有機ヒ素による地質汚染現場であるが、浄化完了現場に地波現象が襲い、噴砂・噴水現象が確認された。噴砂の溶出ヒ素濃度は、土壌環境基準の400倍にあたることが知られている。浄化した筈の現場で汚染が拡大したのである。数多の地質汚染現場は、東日本大震災の洗礼を受けていることは確かである。再点検がなされ、公表されているのだろうか?
また、国土・宅地に関する政府・地方自治体の液状化評価は、多くの場合にN値で評価されている。しかし、この評価法は現象と整合性がないことが再確認されてきている。オール・コアの精密な診断や噴砂孔・地波跡のトレンチ掘削露頭調査からも、N値評価法は現象と不一致であることが明らかにされてきている。人工地層の形成過程と幾つかのメカニズムからなる流動化現象の診断とその診断にそった理論的対策が、住宅市街地の地質環境に関わる減災につながることも明らかになった。
犠牲者の不幸を無にしてはならない。原子力発電の賛否は別として、原発推進者でもあった前首相小泉純一郎氏が原発反対論を述べるにあたり「過ちては則ち改めるに憚ること勿れ」と述べているが、孔子がその弟子たちに「君子として」の心構えとして教えた言葉である。
私達のNPO日本地質汚染機構は、国家的・庶民的観点から国土・宅地の安全性をより高める使命を持っている。地質汚染問題でも、そして液状化後の流動化・地波災害問題でも、現象とその摂理を重視する単元・階層調査法を研究し、確立してきた。この調査法でなければ正解が得られないことも明らかになった。
科学性・中立性をもとに会員・地質汚染診断士・地層液流動化診断士の各位は、国民ともども国土・宅地のより良い環境作りに貢献することを自覚している。
国家・庶民を思う政府か?国家・庶民に背を向ける政府かの真価が問われる年でもある。
NPO法人日本地質汚染審査機構 理事長
理学博士・茨城大学名誉教授 楡井 久(地質汚染診断士・地層液流動化診断士)
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