第1回地層液流動化診断士の資格認証
2012年12月22日〜12月24日
目的:2011年東・k地方太平洋沖地震では、日本列島の人工地層分布地域で液状化・流動化・地波現象による甚大な被害が発生した。
この震災被害と福島第1原子力発電所事故に関して、2011年6月に国際地質科学連合(IUGS)環境管理研究委員会(GEM)は“2011年東日本太平洋沖地震にかかわる国際地質災害防止宣言”をだした。その内容は3本の柱からなる。その1本として、下記に示した液状化・流動化・地波現象による地質災害に関するものがある。
東日本大震災では、水面埋立地・谷埋立地内の人工地層で液状化−流動化・地波現象が大規模にみられ、それによる地質災害が発生した。人工地層の分布は、日本のみならず、全世界でも同じである。東日本大震災では、水面埋立地・谷埋立地内の人工地層で液状化−流動化・地波現象が拡大している。大規模地質災害の防止のために、人工地層と下位の自然地層境界との不連続、すなわち人自不整合の綿密な調査が必要である。
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(2011年東日本太平洋沖地震にかかわる国際地質災害防止宣言より)
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当法人では、以上の科学的観点も踏まえ、液状化・流動化・地波現象を研究している科学技術者・地質環境コンサルタントの成果が、国内外の地質災害の減災に貢献することを確信し、グローバルな観点からの減災貢献も考慮し地層液流動化診断士の資格制度を確立した。
そして、人工地層研究からの液状化−流動化・地波現象の判定が、国内では早急な課題となっている。しかし、人工地層単元に関わる知識の習得には時間を要する。しがって、平成25年度内は、地質汚染に関わる単元調査を習得してきた地質汚染診断士に限定して、研修会を実施し、合格者に地層液流動化診断士の資格を認証することが理事会で承認された。ちなみに、人類のおごりで確立してきた工学を過信し、自然の摂理・法則から学ぶ地質学を欺いてきたツケとして起こるべくして起こった地質災害を契機に、自然から再履修するために最初におこなったOJT(On the Job Training)の資格認証研修会でもある。
研修会・試験会場: NPO法人日本地質汚染審査機構関東べ−スン・センター研修センター(千葉県香取市)・潮来観光ホテル(茨城県潮来市)
研修会日時:平成24年12月22日〜24日
プログラム(PDF形式193KB)
合格判定:液流動化判定能力度と総合討論と紙上問題
@液流動化判定能力度
液流動化・地波現象のほとんどが、人工地層内で発生することは、従来からの人工地質学では良く知られてきている。しがって、判定にとって、欠かせないのが人自不整合の判定である。次に、人工地層単元の基礎的整理である。次に、液流動化・地波現象による地層単元の破壊の判定である。実習で行われた地層の液流動化判定の例を、半割り地層コア断面とその剥ぎ取り試料との写真(第1図・第2図)で示す。
第1図 コア写真
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地層コアとその剥ぎ取り試料をよく観察すると、液状化・流動化した部分や地波の証拠が読み取れる。また、剥ぎ取り試料を実体顕微鏡下で観察すると、粒子間の乱れも観察可能である。ラミナの液状化・流動化による乱れを立体的に観察する場合には、ソフトX線撮影観察も行う。地層の液流動化、地波診断は、病人の医学診断と同じ手法である。研修会では、このような地層コア試料採取の現場管理から運送、半割地層コアの作成法、地層コアの剥ぎ取り試料作製手法、ソフトX線撮影の試料作製が行われた。そして、液流動化、地波現象の診断が行われた。以下に、第1図での地層コアの剥ぎ取り試料を第2図に示す。
第2図 液流動化、地波診断のための地層コアの剥ぎ取り試料
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また、隣接する調査地点との人自不整合の連続性や地層の流動化した箇所の連続性を診断するために、地層形成の絶対年代、花粉・珪藻分析結果から、液流動化―地波断面図作成の重要性なども議論され、研修者の液流動化判定能力度が判定された。
A紙上試験 第一回地層液流動化診断士試験問題(PDF形式177KB)
受験者の紙上試験結果:
受験者得点傾向
100〜91点 |
20% |
90〜81点 |
67% |
80〜71点 |
7% |
70〜61点 |
7% |
地層液流動化診断士合格者 (合格者数:15名)
1: | 増田 俊寿 |
2: | 佐藤 恭一 |
3: | 佐藤 光男 |
4: | 小原 崇嗣 |
5: | 愛甲 義昭 |
6: | 楡井 久 |
7: | 上砂 正一 |
8: | 楠田 隆 |
9: | 笠原 豊 |
10: | 檜山 知代 |
11: | 高畠 英世 |
12: | 大脇 正人 |
14: | 風岡 修 |
15: | 大賀 英二 |
16: | 布施 太郎 |
第23回地質汚染調査浄化技術研修会の報告
2012年11月22日〜11月24日
主にVOCに関わる地質汚染の調査・浄化に関する研修会を11月26〜28日に千葉県市原市で開催しました。
調査浄化技術に関する室内講義、旭硝子千葉工場大規模地質汚染浄化サイトの見学、市原市養老川中流域汚染修復サイトにおける地下空気汚染濃度測定実習、放射線簡易測定実習、室内でのコア観察記載実習、コア地層汚染簡易分析実習などの研修を行いました。今回の参加者は5名と少なかったのですが、これらの実習・講義を通じて「単元調査法」のエッセンスを習得していただけたと考えています。
参加者から次のような感想文をいただいています。
私は、工場での環境法に対しての行政窓口と工場のEMS事務局責任者という立場で今回の研修会に参加させて頂きました。EMSの観点から、単なる法の順守に留まらず、「遵守」のための理解を深めることを一番の目的としていました。
今回の研修会は、その期待を上回る充実した講義内容であり、「地質汚染」対策にあたって一番必要な「事実を調査」するための知識・方法を、実習なども含めて深く学ぶ機会となりました。もちろん、ボーリングコア試料による堆積構造の記載などは、一見(いちげん)の素人が簡単にできるものではないことが良く分かりましたし、その緻密さ故に、堆積構造の記載の重要性を、一層肌身で感じることができました。また、化学物質による地質汚染に留まらず、放射性物質汚染に関しても、放射線、放射性物質の知識、放射線の測定方法とその原理、除染時の注意事項までお時間を取ってご説明頂き、放射性物質汚染対処特措法についても、改めて正しい知見を得ることができました。
とは言え、3日間の研修を通して最も感銘を受けたのは、各分野の第一人者である先生方が、現状に甘んじることなく、常に「真実はどうなっているのか」という真摯な姿勢で、忌憚のない意見交換を行われていたことです。その姿こそが、受講者である我々が最も学ばなければならない姿勢であると痛感しましたし、また、その考えの元に実施されている「単元調査法」こそが、土壌の状態を知らしめる極めて重要な方法であることを実感しました。
工場に所属する私の立場では、水濁法、土対法、放射性物質汚染対処特措法のみならず、様々な環境法対応が求められますが、直接的な法的要求事項に留まらず、その根底にある「汚染の未然防止」、「環境負荷の低減」に引き続き取り組んでいくためにも、今回ご教授頂いた「真実をつきつめる姿勢」を胸に刻み、地質汚染に係る知識をしっかりと活用していこうと考えております。 (旭硝子且ュ島工場 塩冶 源市郎氏)
プログラム(PDF形式155KB)
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地下空気汚染濃度測定 |
コア観察記載実習 |
第12回残土石処分地・廃棄物最終処分場に関わる地質汚染調査浄化技術の研修会の報告
2012年4月26日〜4月29日
4月26日(木)から4月29日(日)に標記技術研修会を茨城県潮来市・千葉県香取市で開催いたしました。今回は参加者10名の他、地
質汚染診断士の更新講習を兼ねて開催したため、13名の地質汚染診断士が参加しました。
初日は潮来ホテルで地質汚染調査の基本などの講義を行いました。松田潮来市長による潮来市の液状化に関する講演も行われま
した。2日目は、関東ベースン実習センターで雨の中、地下水位測定、水準測量、簡易ボーリング、露頭観察、放射線量測定の実
習などを行いました。3日目は、同じく実習センターで現場簡易分析などの講義を行いました。最終日も、実習センターでボーリ
ングコア観察記載の実習を行いました。
無事に研修会を終了することができ、講師の方々や関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。次に参加者の感想文を示します。
単元調査と無単元調査の違いを、現場の実例を持って理解できた。これは今回の研修での大きな成果の一つとなりました。研修資料を読んだり講義で聴いた初日は、まだ何となく理解した程度であったが、2日目関東ベースン実習センターで楡井先生による、地質断面観察演習を通じて要約その意味や地層・地質観察理解の重要性を改めて認識した次第です。特に楡井先生からの雨の降るぬかるんだ現場で、細部にわたる観察に基づく人工地質、自然地質の分類の仕方、時間的な形成過程、地層地質の大局から細部への展開観察の仕方、現物を通じて時間的同一単元、物質的同一的単元の見分け方、更に『この地層地質観察から、その地層地質形成プロセスが見えるように、物語になるように説明できるように』が究極の観察目標と理解した。これが、更なる次の効果的充実した調査の基礎になると理解できた。ここが、無単元地層と理解した調査対応との差異である。この時、先生と共に同じ班の仲間の人たちの経験や知識をぶつけ合うことで、観察がより生きたものになるのを実感出来た。(後略) (合同会社グリーンネッツ 栗原 茂氏)
今回の研修参加に際して、私は主に水溶性天然ガス井の坑内調査や・・芟ヒや温泉井戸の設計に携わる地質屋ですが、地質汚染調査やその浄化に関する業務には指したる知識や経験はありませんでした。講習が初まって、先ず感じたことは内容レベルの高さでした。ですが、説明は全般的に科学的な理論に基づいたアカデミックなもので、たいへん興味深く受講させて頂きました。その他にも、タイムリーな題材、実践的な実習も含まれる等、たいへん充実したものでした。以下、特に印象に残ったことを挙げます。
まず、タイムリーな題材として盛り込まれた3.11大震災に伴う液状化被害の現状や放射能汚染についての行政対応について、たいへん臨場感のあるお話を頂きました。このために、潮来市長の?田様が直々にお来しになりお話をされたことは驚きでした。 次に、地質汚染に対する調査や対策を実施する際には、地下の詳細な地質状況を反映した「単元方法」を代表とする適正方法で施工される必要があります。ところが、現行の土対法では「無単元法」を代表とする手間のかからない方法が優勢な内容になっており、結果的に汚染が深部に拡大している場合が多分にあることを知りました。このことは、日本国内の水資源が脅かされる危険性のある問題と思いました。このような問題に誠実に対応するべきであり、そのためにも日々の研鑽で技術や知識を身につけておく姿勢が必要であることが、今回の講習の根底概念であると強く感じました。 個人的には、人工層の露頭で行った実習に最も印象的でした。普段は、主に大深度の井戸に携わっていると、地層を単層毎に詳細に見ることはしませんし、何よりも人工地層の形成過程を露頭やコアから推定する発想自体がありませんでした。これらの実習は、たいへんプラスになりました。(後略)
(潟eクノアース 田村一浩氏)
プログラム(PDF形式161KB)
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水準測量実習 |
ボーリングコア記載実習 |
土対法施行規則による指導の実態調査アンケート結果
平成22年4月1日より土壌汚染対策法の一部を改正した法律が施行されます。これにより地方自治体の汚染診断に係わる負担の増えることが予想されます。そこで当NPOとしては積極的に協力していくために、「改正土壌汚染対策法の3000m2と旧土対法の課長通知の意味」と題したシンポジウムを企画し、これまでの土対法の総括を行いました。
それに際して、都道府県・土壌汚染対策法政令市および東京都特別区における、土壌汚染対策法施行規則による指導の実態調査を行いました。その結果は次のとおりです。
アンケート集計結果(PDF形式174KB)
これまでの地質汚染調査浄化シンポジウム
2012/11/29 第20回 “地質汚染診断士が国民に問いかける”
「そもそも自然由来の汚染物質はあるのか?−自然の摂理・人間行為」
プログラム(PDF形式158KB)
2011/12/18 「シンポジウム利根川中−下流域の液状化・流動化・地波現象
−命を救った液状化地域・安全な街づくりを考える−」
(社会地質学会・古関東深海盆ジオパーク推進協議会主催、本NPO他共催)
プログラム(PDF形式260KB)
2011/ 6/ 4 ・@「シンポジウム「人工改変地と東日本大震災」災害に強いまちづくりを
めざして−房総半島の液状化・津波被害に係る緊急報告−
(社会地質学会・日本地質学会環境地質部会・明海大学不動産学部との共催)
プログラム(PDF形式191KB)
2010/ 9/16 第19回 「イタイイタイ病からの土壌環境基準とは−健康環境基準?経済環境基準?
土壌汚染問題発祥の地から問う−」
プログラム(PDF形式154KB)
2010/ 2/21 第18回 「国民目線からの改正土壌汚染対策法の3000m2と旧土壌汚染対策法の
課長通知の意味」
プログラム(PDF形式139KB)
2009/ 8/22 第17回 「地質汚染の調査・浄化と地球温暖化抑制」(その1)
プログラム(PDF形式146KB)
2008/12/15 第16回 「大阪の地盤沈下と地質汚染」−地下水揚水禁止−の歴史と地質汚染
のかかわり
プログラム(PDF形式184KB)
2008/ 4/19 第15回 「土壌汚染対策法施行5年目の課題」−土壌汚染対策法下でも地下水資源
と環境資源はいかに守られてきたか。また、今後いかにするべきか?
プログラム(PDF形式186KB)
2008/ 2/23 第14回 「土壌汚染対策法施行5年目の課題」−土壌汚染対策法制定前後の
自治体での地下水資源観(環境資源観)の変遷
プログラム(PDF形式96KB)
2007/12/22 第13回 「土壌汚染対策法施行5年目の課題」−土壌汚染を含む地質汚染調査・
浄化対策に科学をいかに貢献させたか
プログラム(PDF形式140KB)
2007/ 9/29 第12回 「土壌汚染対策法施行5年目の課題−土壌汚染対策法は目的を達成
・@ できたのか?またできるのか?
プログラム(PDF形式140KB)
2007/ 6/24 第11回 「単元調査法と有害地層・汚染地層の簡易判別テクノロジー」
−地質汚染科学と医療地質科学の狭間をみる
プログラム(PDF形式166KB)
2007/ 1/21 第10回 「石油探査・油地層汚染と単元調査法」−油地層汚染の本質的な調査・
浄化に迫る
プログラム(PDF形式155KB)
2005/ 9/21 第9回 「地質汚染=関東の風・関西の風」−未来の子供に贈る完全浄化
マンションと汚染マンション 我孫子(日立精機跡地)VS
大阪(三菱金属大阪精錬所跡地)
プログラム(PDF形式215KB)
2005/ 4/23 第8回 「“土壌”汚染調査の問題点と改良点」−単元調査法と無単元調査法
プログラム(PDF形式175KB)
2004/ 9/17 第7回 「地質環境と有害物質の地層処分」−高レベル廃棄物から産業廃棄物・
一般廃棄物、そして残土石・地質汚染の現状
プログラム(PDF形式190KB)
2004/ 5/22 第6回 「土壌汚染調査法の欠点と改良点」−国民の健康を真に守れるのか?・
地下水資源を保全できるのか?
プログラム(PDF形式113KB)
ハイブッリト・ドレーンヘチマ工法
2011年3月11日の東日本大震災により、東京湾岸の埋立地をはじめ利根川中流域・下流域など広い範囲で
深刻な液状化被害が発生しました。本NPOでは、このような地質災害を防止し、災害に強い街づくりに寄与することを目的とした液状化対策工法−ハイブリッド・ドレーンヘチマ工法−を開発しました。この工法は、地震時に上昇する間隙水圧を消散させる工法で、次の特徴をもっています。
◎狭い場所でも施工可能
◎透水性を維持するフィルターと耐圧性にすぐれ、地層中で変質しないドレーン材の使用
◎地質環境に合ったフィルター処理によりドレーンの能力を長期間維持
◎地質条件にあった複数工法の併用
◎経済的に優れている
詳細は次のパンフレットをご覧下さい。
パンフレット(PDF形式2.2MB)
関東ベースン実習センター完成
2007年度末に本法人の「関東ベースン実習センター」(香取市本矢作)が完成しました。薄板軽量型鋼造り1階建て(建坪92.74m2)です。これまで春におこなってきた
「残土石処分地・廃棄物最終処分場に係わる地質汚染調査浄化の技術研修会」の実習会場である残土埋立地を楡井理事長が買い取り、その一部を本法人で借地して建設
したものです。東関東自動車道大栄インターから車で5分程度と交通の便は比較的良好です。
次に報告する第8回残土石処分地・廃棄物最終処分場に係わる地質汚染調査浄化の技術研修会が初めてのおひろめです。今後、会員・一般に貸し出すことも考えていま
すが、現在、当NPOとしては多角的な利用方法を検討中です。
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実習センター全景 |
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All rights reserved.
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